Cleoniceras cleon(クレオニセラス・クレオン)
こちらはマダガスカル産のアンモナイト「クレオニセラス」のカットである。アンモナイトを縦に真っ二つに切って断面に研磨をかけた標本。ここまで来ると,化石コレクションというよりは,部屋に飾るオブジェである。
この標本のすばらしさは,アンモナイトの構造が実によくわかる点にある。ご覧のとおり,アンモナイトの内部は,隔壁によって区切られ,いくつもの部屋に分かれている。これは「気室」とよばれる構造だ。気室は文字通り「気体」の部屋で,個々の部屋は微細な穴によって,隣の部屋とつながっている。残念ながらこの標本ではかけているが,殻の先端には「住房」とよばれるひときわ大きな部屋があり,本体(軟体部)はそこに入る。
気室の役割は,浮力の調整とみられている。気室に水を入れることで沈み,気室から水を出すことで浮き上がる。現代ではいえば,潜水艦のような構造である。アンモナイトは現生種でいえば,オウムガイ類が最も近く,タコやイカのグループに分類される。
殻をつくっているのは,炭酸カルシウムだ。これは海では最もありふれた成分の一つだ。化石化の過程で炭酸カルシウムが気室に充填することが多いが(この標本の中心付近のように),運がよければ気質の外壁に細かな結晶を成長させ,幻想的な空洞をつくることもある。この点で,この標本はすばらしい。惜しむらくは,この標本。ペアとなるもう片面が存在しないことである。


