Anomalocaris canadensis  アノマロカリス・カナデンシス
「アノマロカリス」! 古生物史に燦然と輝く史上最初の大型捕食者である。まがりなりにも古生物ファンであるならば,この名前を知らなければ,失礼ながらモグリだ。この標本は,その付属肢。頭部から前に伸びた「肢」である。
 古生代カンブリア紀。生物は突如,爆発的に進化した。「カンブリア爆発」とも「進化のビッグバン」ともよばれる大イベントである。それまで細々と生きていた生物が,いっきに多様化した事件と位置づけられている(異論もある)。
 この時代,生物はほとんど数センチメートル程度の小型種である。そんな中,アノマロカリスは体長60センチメートルをこえる超大型の捕食者として君臨していた帝王だったとみられている。なんにしろ多種とくらべてずば抜けて大きいのだ。この標本も肢だけでありながら,40ミリの長さがある。当ギャラリーの他のカンブリアモンスター標本と比較していただければ,その大きさがよくわかるだろう。頭部から突き出た2本の肢,大きな眼,ナマコのような胴とヒレ,クラゲのような口をもつ異様な風体の持ち主でもある。2007年現在,世界から8種が発見されているという。
 この標本の持ち主は,「アノマロカリス・カナデンシス」とよばれる種である。カナデンシスの種小名が示すように最初の発見は,カナダ,バージェス頁岩層で行われている。バージェス頁岩層といえば,ウォルコットによる発見と記載が有名だが,実はウォルコット以前に発見されていた数少ない種がこのアノマロカリスであるとはあまり知られていない。
 アノマロカリスの名は,「奇妙なエビ」を意味している。一番最初の発見者は,この肢が,大きな生物の一部分ではなく,単体としてエビのなかまであると考えたことが名の由来である。その後の発見で,全身がまとめて残った標本があり,エビではなく,肢であることが明らかになった。
 この標本は,バージェス頁岩層よりも1000万年以上古い,中国澄江のもの。アノマロカリス・カナデンシスはその名にしばられることなく,中国でも発見されている。澄江のものは,化石の色が赤みを帯びていることが特徴で,黒灰色の岩石に黒く残されたバージェスのものとは質感が大きくことなる。
 なお,肢の部分はアノマロカリスの化石としては,クラゲ状の口とあわせて最もよく発見される。ひょっとしたら,胴体とくらべて硬質だったのかもしれない。市場に流通するのも,このような肢化石が多い。
 右上の画像は,NHKの実物大復元模型とのツーショットである。精巧につくられたこの模型は,海外でも非常に評価が高いときくが,すでに販売が終了している絶品である。
(長さ約40ミリ:中国産:古生代カンブリア紀)
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