Drotops armatus  ドロトプス・アーマタス
この迫力ある三葉虫は,モロッコの「ドロトプス」だ。迫力は写真のせいではなく,実際に体長140ミリメートルの代物である。
 体中から伸びている細かなトゲをとれば,ファコプスと極めて似ているこのドロトプスは,分類学的にも「ファコプス類」という同じ仲間。しかし,どちらかといえばスマートな印象のあるファコプスとちがい,トゲで武装したドロトプスは,まさに圧巻の三葉虫であるといえよう。
 そして,全身のトゲをもっとも有効的に使用している姿勢こそ,この防御姿勢(エンロール)にちがいない。たしかにこう丸まってしまえば,ドロトプスの守りに隙はないようにみえる。
 この標本はほかにも面白い点がある。右の2枚の写真で見てとれるが,胴部を斜めに白い鉱物の帯が横切っているのだ。この鉱物は,三葉虫の殻と同じ成分でできるカルサイト(方解石)。ともすれば,こういった“傷跡”は化石の質を下げると思われがちだが,むしろ,この帯の存在こそ,このドロトプスが正真正銘本物の化石であることを意味している。単純に考えても,フェイクをつくり荒稼ぎをする人間が,このような手の込んだフェイクをつくるとはとても思えない。
 防御姿勢をとるドロトプス標本の場合,懸案となるのがそのクリーニングの仕方である。いうまでもなく,全身を母岩から切り離してしまえば,ドロトプスの自重で下側(尾部側)のトゲは折れてしまう。かといって,すべてを母岩に残したままのクリーニングでは,ドロトプスの魅力は十分にははっきできない。私もこれまでにいくつか防御姿勢をとるドロトプスを見てきたが,たいていはトゲのそろっていない標本だった。
 この標本は,そうした懸案を実にうまくクリアしている。あえて右側面を母岩の中に残すことで,全体のトゲを掘り出しても安定して保管できるだ。プレパレーターの発想と実力に脱帽である。
(体長140ミリ:モロッコ産:古生代デボン紀)
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