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Scyphocrinites sp.  スキフォクリニテス
典型的なウミユリ「スキフォクリニテス」の化石である。茎から触手までそろった一品である。
 ご覧のとおり,まるでユリのような形状をしており,「ウミユリ」の名もその形状に由来する。しかし実態は植物ではなく,実は動物,棘皮動物の仲間だ。つまり,ヒトデの親戚ということになる。古生代に栄え,その後勢力は衰えたが,現生種も存在する。ウミユリ類は100種類近い種が確認されており,スキフォリクリテスはその中の一種。
 ウミユリ類は茎で海底にはりついて,がく(右下の画像)から触手をのばし,えさを食べていた。スキフォクリテスの場合,触手の先には,まるでフィルターのように細かな枝がならぶ(右上の画像)。微小生物を捕まえるのに適した構造である。

 さて,この標本,母岩をみると縦に何本もの線が入っているのにお気づきだろうか。これは岩石上の石英脈である。この石英脈を追っていくと,母岩の右端の化石などには線が入っているが,メインとなる化石には石英脈の痕跡が入っていないことに気づかれるだろう。実はこのメイン化石は,フェイクの可能性が高い。
 母岩に走る石英脈が化石だけをうまくよけるということは,まず考えられない。すると,メインの化石にも当然入ってしかるべき線構造が,この標本では確認できないのである。つまり,母岩の上に,人為的に(石英脈が母岩に入ったあとに)メインの化石を“設置した”と思われるのである。
 もっとも,フェイクとはいっても,メインの化石自体は本物である。「?」と思われる方もいるかもしれないが,つまりこういうことだ。ウミユリの化石にふさわしい岩石プレートを探してきて,そこにスキフォクリニテスの部分化石(パーツ)を並べ,形態を復元したのである。
 ウミユリの部分化石は決して高価ではない。茎の一部,がくの一部などでは商品にならないくらいである。しかし,根気良く集めて組み立てれば,結構値のはる立派な標本となるのである。
 ここから先は,復元者や仲介業者の良心と,購入者の目利きの問題である。今回,この標本の仕入れ値は,同種の同クラス標本の3分の1に満たない。復元の分だけ手間がかかっていると思うが,この世界では何よりもナチュナルなものが好まれるのである。仲介業者が良心的だったので,こちらが指摘するまでもなく,先に復元について話をしてくれた。これが悪質な業者だと,復元に触れずに3倍以上の相場価格で売りつけてくるからこまったものである。詐欺などと同じで,「疑ってかかること」「どれだけフェイクの情報をもっているかということ」が購入者には課せられる。かくいう私も修行中の身だが,信頼に値する仲介業者やコレクターに出会うのが,一番手っ取りばやい道だと思う。
(茎〜がくまで約18センチ:モロッコ産:古生代シルル紀)
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