2011年,2012年のニュース
長い牙をもつ哺乳類は,前肢の力が非常に強かったらしいということがわかりました。
新生代古第三紀始新世から第四紀更新世まで,ニムラブス科(ホプロフォネウスなど)やネコ科(スミロドンなど)など,長い牙をもつ哺乳類が数種類存在していました。しかし牙の形や長さは種類によって大きく異なっていました。これら長い牙をもつ哺乳類にとって,獲物を仕留めるのに牙とともに大きな役割をになっていたと考えられているのが,前肢です。
(1/4 National Science Foundation, Morphological convergence of the prey-killing arsenal of sabertooth predators. Paleobiology, 38(1), 1-14)
今回,これらの哺乳類の前肢の形と牙の形には相関関係があるのか,そして科が違っても,この前肢と牙の相関関係は保たれているのかが調べられました。これを調べるために,長い牙をもつ哺乳類13種と,現生のネコ科6種の前肢と牙の特徴が調べられました。この結果,長く薄い牙をもつ種ほど,前肢ががっしりしたつくりになっているらしいということがわかったそうです。ニムラブス科やネコ科など科が違ってもこの傾向が見られたそうです。
長く薄い牙ほど折れやすくなります。前肢の力が強くなるほど,獲物を仕留める際に牙が折れる危険性が少なくなると研究者は考えています。
2012/1/23
南米から初めて,白亜紀の哺乳類の頭骨の化石が発見されました。
アルゼンチンの中生代白亜紀後期の地層から,哺乳類の頭骨の化石が発見されました。南米のこの時代の地層から哺乳類の化石が発見されるのは初めてです。
(11/2 UofL Today,Highly specialized mammalian skulls from the Late Cretaceous of South America. Nature(7371), 479, 98?102)
発見されたのは,現在の有袋類と有胎盤類の共通祖先の仲間と考えられているドリオレステス類です。ドリオレステス類は北米とヨーロッパのジュラ紀の地層から歯と顎の化石が発見されています。南米では白亜紀後期に独特の進化を遂げ繁栄していたことがわかっていますが,これまで白亜紀後期以前の地層からは発見されていませんでした。このため南米のドリオレステス類の起源や初期の多様化についてはよくわかっていませんでした。
今回発見されたドリオレステス類はCronopio dentiacutusと名付けられました。C. dentiacutusにより初めて,ドリオレステス類の頭骨全体の形が明らかになりました。吻部は非常に長く細く,頭蓋骨は丸い形をしているそうです。そしてこの頭骨には非常に長い犬歯が生えていました。体長は10cmから15cmほどで,昆虫などの虫を食べていたと考えられています。C. dentiacutusはジュラ紀のローラシア大陸に生きていたドリオレステス類と共通した特徴をもつ一方,白亜紀の南米に生きていた,独特で多様なドリオレステス類の特徴ももっていたことがわかったそうです。
2011/11/6
南米で最古のげっ歯類の化石が発見されました。
ペルーの新生代古第三紀始新世中期(約4100万年前)の地層から,げっ歯類の化石が発見されました。
(10/12 Case Western Reserve University,Middle Eocene rodents from Peruvian Amazonia reveal the pattern and timing of caviomorph origins and biogeography. Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences, FirstCite)
このげっ歯類は,現生のモルモットやチンチラなどと同じ,テンジクネズミ上科に属すると考えられています。南米で発見されたテンジクネズミ上科の化石はこれまで,チリとアルゼンチンから発見された新生代古第三紀漸新世前期(約3200万年前〜約3000万年前)のものが最古でした。
今回発見されたげっ歯類の歯の特徴はアフリカから発見されたげっ歯類の歯の特徴に最も似ていたそうです。
今回の発見は,南米の初期のげっ歯類の起源がアフリカにあるとのこれまでの説を裏付けるものだと研究者は考えています。
2011/10/17
氷期の寒冷な気候に適応した哺乳類たちが,チベットで進化し始めたらしいということがわかりました。
チベットの新生代新第三紀鮮新世中期(約3600万年前)の地層から,原始的なケサイの化石が発見されました。ケサイは寒冷な気候に適応した長い毛をもち,氷期にユーラシア大陸に広く棲息していました。
(9/2 ScienceDaily,Out of Tibet: Pliocene Woolly Rhino Suggests High-Plateau Origin of Ice Age Megaherbivores. Science, 333(6047), 1285-1288)
鮮新世中期はまだ温暖でユーラシア大陸にはまだ大きな氷河は発達していなかったと考えられています。ケサイは高度の高い場所で寒冷な気候に適応し,氷期が始まるとアジアやヨーロッパへと棲息域を広げていったと研究者は考えています。
ケサイのほかにも,3本の指をもつウマ(Hipparion),ブルーシープ(Pseudois),チベットレイヨウ(Panthoops),ユキヒョウ(Unica),アナグマ(badger)など,23種類の哺乳類が一緒に発見されたそうです。
これまで,寒冷な気候に適応した更新世(約259万年前〜約1万年前)の動物相は北極圏のツンドラ地域や寒冷なステップ地域で進化したと考えられてきました。しかし今回これらの動物の化石がチベットから発見されたことにより,チベット高原の厳しい冬によって,その後更新世で繁栄することになる哺乳類が寒冷な気候に適応し始めたのだろうと研究者は考えています。
2011/9/4
最古の真獣類の化石が発見されました。
中国遼寧省の中生代ジュラ紀後期(約1億6000万年前)の地層から,真獣類(有胎盤類)の化石が発見されました。これは今まで発見されている真獣類の中で最古の化石になります。今回発見された真獣類はJuramaia sinensisと名付けられました。
(8/24 ScienceDaily,A Jurassic eutherian mammal and divergence of marsupials and placentals. Nature, 476(7361), 442?445)
分子時計の研究から,真獣類が有袋類と真獣類の中間的な段階の有袋類・真獣類段階獣類から枝分かれした時期は約1億6000万年前だったという結果が得られています。しかしこれまで発見されている中で最古の真獣類の化石は中生代白亜紀前期(約1億2500万年前)のEomaiaで,分子時計の研究から得られた年代よりも約3500万年新しいものでした。J. sinensisの発見により,分子時計の研究から得られた真獣類の出現の年代が化石記録から推定される年代とも非常に近いということがわかりました。
J. sinensisの前肢は木に登るのに適した形をしているそうです。ジュラ紀の哺乳類の多くはもっぱら陸上で生活していたと考えられることから,真獣類は他の哺乳類が利用していない生態的地位を占めることで他の哺乳類との競争に勝つことができたと研究者は考えています。
2011/8/28
クジラ類は水中で音の方向を識別するために左右非対称の頭骨を進化させたらしいということがわかりました。
歯クジラ類の頭骨は左右非対称になっています。また特殊な構造をした鼻から高周波の音を出し,反響定位を行っています。一方ヒゲクジラ類の頭骨は左右対称で反響定位もすることができません。このことから,原始的なクジラである原鯨類の頭骨は左右対称で,左右非対称の頭骨は反響定位とともに歯クジラ類で発達したと考えられてきました。
(8/22 University of Michigan News Service,Cranial asymmetry in Eocene archaeocete whales and the evolution of directional hearing in water. Proceedings of the National Academy of Sciences, Early Edition)
今回,原鯨類の変形の見られない頭骨6点の対称性が調べられ,左右対称であることがはっきりしている偶蹄類の頭骨と比較されました。この結果,6点の頭骨すべて左右非対称であることがわかったそうです。このことから,反響定位に関係なく,歯クジラ類とヒゲクジラ類が出現する以前から頭骨は左右非対称であったことが示唆されます。初期のヒゲクジラ類も左右非対称の頭骨をもっていたものの,後に左右対称になったと研究者は考えています。
原鯨類の頭骨の左右非対称性は2次元的に曲がったものではなく,3次元的にねじれたものであることもわかったそうです。また原鯨類は歯クジラ類が水中で音の方向がわかるために用いている構造と似た構造をもつそうです。このことから,頭骨の左右非対称性は反響定位ではなく,音の方向を識別できる能力に関連して進化してきたと研究者は考えています。
2011/8/28
アルゼンチンからたくさんのげっ歯類の化石が発見されました。
ボリビアの新生代新第三紀中新世中期(約1300万年前〜約1250万年前)の地層から,哺乳類の化石が大量に発見されました。
(8/4 Case Western Reserve University,New Middle Miocene Caviomorph Rodents from Quebrada Honda, Bolivia. Journal of Mammalian Evolution, Online First)
この中で最も多く発見されているげっ歯類はチンチラの仲間のProlagostomusだそうです。あまりにも数が多いため,プレーリードッグのような群れを作って生活していたのではないかと研究者は考えています。
次に多く発見されているげっ歯類はAcarechimys sp.とGuiomys unica。Acarechimys sp.は新種の可能性もあるそうです。Guiomys unicaはこれまでは1600km以上も離れたアルゼンチン,パタゴニア地方からしか発見されていませんでした。
また新種の哺乳類も20種以上発見されているそうです。
その中で特に珍しいのは,Mesoprocta hypsodusとQuebradahondomys potosiensisのげっ歯類2種。
M. hypsodusはコスタリカからブラジルにかけて多く生息しているアグーチやアクシに近縁だと考えられています。体長45cm〜50cm,肩高約20cm,体重3.5kg〜4.5kgと推定されています。アグーチやアクシと同じように果物や木の実を食べ,木の間を食べ物を探して長時間過ごしていたと考えられていますが,歯の形から,もっと開けた場所に棲息していた可能性もあると,研究者は考えています。
Q. potosiensisは現在では中米と南米中に広く生息しているトゲネズミの仲間だと考えられています。木の歯を食べ,少なくとも数時間は木の上で過ごしていたと考えられています。M. hypsodusが地上で食べ物を探していたのと同じ木に住んでいた可能性があるとも,研究者は考えています。
今回発見されたげっ歯類は,南米大陸北部よりもパタゴニア地方のげっ歯類に似ていると研究者は考えています
2011/8/5
ウガンダから,約2000万年前の類人猿の化石が発見されました。
ウガンダの新生代新第三紀中新世の地層から,類人猿の頭骨の化石が発見されました。
(8/3 DiscoveryNews)
この時代の類人猿の完全な頭骨が発見されるのは初めてだそうです。この頭骨はオランウータンやゴリラなどの大型類人猿に近縁な Ugandapithecus majorの雄の頭骨だと考えられています。
死んだときは10歳くらいだったと考えられています。頭部はチンパンジーくらいの大きさですが,脳の大きさはヒヒと同じくらいだったと考えられています。木に登って生活していたと考えられています。
2011/8/4
これまで発見されている中で最大のクマの化石が発見されました。
アルゼンチンの新生代新第三紀更新世前期〜中期(約200万年前〜約50万年前)の地層から1935年に発見された化石が,これまで発見されている中で最大のクマの化石であることがわかりました。
(2/3 Nationnal Geographic News,The Largest Known Bear, Arctotherium angustidens, from the Early Pleistocene Pampean Region of Argentina: With a Discussion of Size and Diet Trends in Bears. Journal of Paleontology, 85(1), 69-75)
Arctotherium angustidensと名づけられたこのクマは2本足で立ち上がったときの体高約3.4m,体重は約1.6tあったと見積もられています。それ以前に知られていた最も重いクマは体重約1.1tだったそうです。A. angustidensは当時陸上で最も大きく最も強い肉食動物だったろうと研究者は考えています。
A. angustidensがこれだけ巨大な体をもっていたのは,南米大陸に獲物が豊富にいたのと,他に巨大な肉食動物がいなかったためであろうと研究者は考えています。
2011/4/17
