2011年,2012年のニュース
バージェス頁岩から,チューリップのような形をした動物の化石が発見されました。
バージェス頁岩から,新属新種の動物の化石が発見されました。Siphusauctum gregariumと名付けられたこの動物は,長さ約20cm,まるでチューリップのような形をしているそうです。
(1/18 University of Toronto,A New Stalked Filter-Feeder from the Middle Cambrian Burgess Shale, British Columbia, Canada. PLoS ONE, 2012, 7 (1))
長い茎をもち茎の上には膨らんだ杯状の萼があります。萼の周りは鞘状の構造で囲まれています。この鞘状の構造は六放射相称で,下部には,6個の穴が茎を囲むように開いています。S. gregariumは海水中を浮遊する粒子をこしとって食べていたと研究者は考えています。鞘状の構造の下部に開いた6個の穴から海水を吸い込み,鞘の内部で粒子をこしとっていたと考えられています。鞘状の構造の内部には大きな胃,消化管,そして真っ直ぐな腸があり,鞘状の構造の上部中央にある肛門へとつながっています。茎の下端は円盤状になっており,これで体を海底に固定していたと考えられています。多くの個体が固まって発見されることが多く,群生していたと考えられています。
杯状の萼と長い茎は現生の様々な動物のグループに見られますが,S. gregariumの特徴は現生のどの動物にも当てはまめることができないそうです。
2012/1/23
四肢は氾濫原で進化したらしいということがわかりました。
魚のヒレからの四肢への進化は,古生代デボン紀(約4億1600万年前〜約3億5900万年前)に起こりました。最近の研究から,四肢の進化が脊椎動物がまだ水中生活をしているときから起こったらしいということはわかってきましたが,その進化が起こった環境についてはあまり重要視されていませんでした。
(2011/12/27 University of Oregon Media Relations,Woodland Hypothesis for Devonian Tetrapod Evolution. The Journal of Geology, 119(3), 235-258)
今回,魚類から両生類への進化途中の生物の化石やその足跡化石が見つかる地層の堆積相が調べられました。この結果,これらの化石が発見された地層は降水量の多い森林で堆積したらしいということがわかったそうです。
このことから,研究者は魚類から両生類への進化は樹木の生い茂った氾濫原で起こったと考えています。四肢は木の根などの障害物を乗り越えるのに役立ちます。研究者は,樹の生い茂った氾濫原という新しい環境に進出することで脊椎動物は四肢を獲得したのだろうと考えています。
2012/1/4
魚類では頭部が最初に変化して多様化が起こったらしいということがわかりました。
生物は絶滅と多様化を繰り返して進化してきました。現生種の研究から,生物の多様化には2つの説が提唱されています。1つは最初爆発的に多様化した後,その多様性が長期間保たれているというもの。もう1つは環境の変化に合わせて体が最初に変化し,そのあと頭部が変化するというものです。しかしこの2つの説が豊富な化石記録に基づいて検証されることはこれまでありませんでした。
(2011/12/21 The University of Chicago Medical Center,Heads or tails: staged diversification in vertebrate evolutionary radiations. Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences, FirstCite)
今回,2回の絶滅イベントの後の魚類の多様性の変化が調べられました。1つ目は古生代デボン紀末(約3億5900万年前)の大量絶滅後の多様化,2つ目は中生代白亜紀末(約6550万年前)の大量絶滅後の多様化です。
それぞれの期間での,種ごとの体高,ヒレの位置,顎の形といった違いが調べられました。この結果,両方の期間で,頭部の変化が体の変化よりも先に起こったらしいということが分かったそうです。このことから,食性が環境への適応よりも重要であるらしいと研究者は考えています。新しい食物の出現がまず多様化を引き起こし,新しい環境への適応はその後に起こったらしいと研究者は考えています。これは多様化に対する前述の2つの説とは異なる結果です。
しかし今回明らかになった多様化の仕方がすべての生物,すべての時代にあてはまるかどうかを確かめるには,さらなる研究が必要と研究者は考えています。
2012/1/4
これまで胚と考えられてきた化石が,単細胞生物の化石であるらしいことがわかりました。
中国南部の約5億7000万年前(先カンブリア時代エディアカラ紀)の地層からは,細胞分裂をしている途中の細胞の化石が発見されます。
(12/22 University of BRISTOL,Fossilized Nuclei and Germination Structures Identify Ediacaran "Animal Embryos" as Encysting Protists. Science, 334(6063), 1696-1699)
この細胞分裂は細胞の成長を伴わない卵割に似ているため,これまでこの化石は初期の動物の胚の化石だと考えられてきました。
しかし今回,この化石がX線によって調べられ,この化石に動物とも胚とも異なる特徴があることが分かったそうです。この化石は,動物の祖先にあたる単細胞生物の無性生殖の途中の化石であると,研究者は考えています。
2011/12/26
アノマロカリスは非常に優れた視覚をもっていたらしいということがわかりました。
オーストラリア,カンガルー島の約5億1500万年前(古生代カンブリア紀)の地層から,アノマロカリスの複眼の化石が発見されました。
(12/8 The University of Adelaide,Acute vision in the giant Cambrian predator Anomalocaris and the origin of compound eyes. Nature, 480(7376), 237?240)
長さ約3cmの眼は,16000個ものレンズで構成されていたそうです。このような眼をもっていたことから,アノマロカリスは非常に鋭い視覚を持っていたものと研究者は考えています。現生の昆虫や甲殻類でもこのような優れた視覚をもつものはほとんどなく,アノマロカリスと同じくらいの視覚をもつものはトンボなどわずかな種類しかいないそうです。
今回の発見から,複眼は硬い外骨格や歩脚よりも早く,節足動物の進化のごく初期に出現したらしいと研究者は考えています。
2011/12/18
最初の歯は口の外で進化したらしいということがわかりました。
デボン紀前期(約4億1600万年前〜約3億9800万年前)の棘魚類の化石に,最初の歯が残っているのがが発見されました。
(11/17 Discovery News)
この魚の口の縁(唇)には,とがった鱗が並んでいたそうです。研究者はこれは鱗から歯に進化する途中の段階のものだと考えています。歯は最初口の外で鱗から進化し,その後口の中へ移動していったと研究者は考えています。
口の外に尖った鱗が並んでいることによって獲物を咥えやすくなり,獲物を丸呑みするまで獲物をしっかり捕まえていることができると研究者は考えています。腹部に残った化石やその他の証拠から,この魚の主食は甲殻類などの節足動物,さまざまな軟体性の生物,そしてほかの魚だったと考えられています。
2011/11/19
約5000万年前のガの翅の色がわかりました。
生物の色には,色素によって発色される色のほかに,構造色というものがあります。構造色はクジャクの羽根や貝殻の内側,ガやチョウの翅などに見られます。この中でもチョウやガはさまざまな色の構造色を発し,自分の体の毒性を示したり,交配相手を見つけるのに使っています。構造色はチョウやガにとって重要な役割を担っているものの,それがどのようにに進化してきたかはこれまでわかっていませんでした。
(11/15 ScienceDaily,Fossilized Biophotonic Nanostructures Reveal the Original Colors of 47-Million-Year-Old Moths. PLoS Biology, 9 (11))
チョウやガは翅の微細な構造によって光を反射し,構造色を作り出しています。今回,ドイツの新生代古第三紀始新世中期(約4700万年前)の地層グルーベ・メッセルから,翅の微細な構造が保存されたガの化石が発見されました。
翅の微細構造をもとに生きていた当時の翅の色を再現した結果,黄色から緑色をしていることが分かったそうです。これは緑色をした葉などに自分の姿を紛れ込ませて見つかりにくくするための役割があったと研究者は考えています。また今回発見されたガは同じように緑色の翅をもつマダラガ科と同じような生態だったと考えられています。マダラガ科は花の蜜を吸います。緑色の翅は花の蜜を吸っている間は目立ちますが,マダラガ科は体内で有毒なシアン化物を合成することができるため,自分には毒性があると捕食者に警告を発することができます。今回発見されたガの緑色の翅には,このような警告の役割もあったと研究者は考えています。
2011/11/17
約5億年前の捕食者の足跡化石が発見されました。
軟体部が保存されたカンブリアモンスターを産出することで有名な古生代カンブリア紀中期(約5億1500万年前)の地層,バージェス頁岩から,足跡化石が発見されました。
(11/9 University of Saskatchewan,Skimming the surface with Burgess Shale arthropod locomotion. Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences, FirstCite)
足跡化石,巣穴の化石,糞化石などの,地層や化石に残された古生物の生活の痕跡は生痕化石と呼ばれます。生痕化石からは,体化石だけではわからない古生物の行動や生態などを知ることができます。
足跡の大きさや足跡から推測される肢の数から,今回発見された足跡化石はテゴペルテ(Tegopelte gigas)によってつけられたものと考えられています。テゴペルテは,凹凸のない軟体性の殻に,33対の肢をもつ節足動物です。体長は当時では巨大な30cmもありました。
体化石と足跡化石から,テゴペルテは肢が海底にほんの一瞬だけ触れるように動かすことによって,海底を素早く滑るように動くことができたと研究者は考えています。これは,テゴペルテは巨大で活発な捕食者だったという考え方を示唆するものです。
またこの足跡化石はバージェス頁岩の中の最も古い層で発見されました。この層は酸素の少ない環境下でゆっくりと堆積してできたと考えられています。
2011/11/13
クモの背にダニが乗っている化石が発見されました。
バルト海から採集された新生代古第三紀始新世(約4900万年前〜約4400万年前)の琥珀がCTスキャンによって調べられました。この結果,クモの背中の上に体長176μm(0.176mm)のダニが乗っていることが分かったそうです。これは研究者によると,CTによってスキャンされた最も小さい節足動物とのことです。
(11/9 The University of Manchester,A minute fossil phoretic mite recovered by phase contrast X-ray computed tomography. Biology Letters, FirstCite)
クモの背中に乗っていたのはコナダニ亜目のダニだそうです。コナダニ亜目のダニは化石ではほとんど発見されません。今回のダニは最古のHistiostomatidaeと考えられています。
ほかの生物の背に乗って移動するという行動は現生ではいろいろな種で見られます。今回の発見により,この行動が少なくとも始新世からあったということがわかりました。しかし現生ではHistiostomatidaeのダニはクモの背にはあまり乗らないそうです。
2011/11/13
クジラの骨の化石にホネクイハナムシの棲み痕があるのが発見されました。
イタリアの新生代新第三紀鮮新世後期(約300万年前)の地層から産出したクジラの骨の化石に,ホネクイハナムシが棲んでいた痕があるのが発見されました。
(11/1 University of Leeds,Evidence of Osedax worm borings in Pliocene (?3 Ma) whale bone from the Mediterranean. Historical Biology)
ホネクイハナムシは通称「ゾンビワーム」とも呼ばれる多毛類です。口や消化管はなく,体の根のような部分でクジラの骨を溶かし,栄養にしていると考えられています。
化石にホネクイハナムシの証拠が発見されたのはこれで2例目です。1例目はワシントン州の太平洋岸で発見されました。今回地中海からホネクイハナムシの証拠が発見されたことにより,数百万年前,ホネクイハナムシが広く分布していたらしいということがわかりました。
2011/11/6
ペルム紀末の大量絶滅後,陸上生物が回復するのに時間がかかったらしいということがわかりました。
古生代ペルム紀末(約2億5200万年前),海生生物の90%以上が絶滅する大量絶滅がおこりました。しかしその後海生生物には新しい目が出現し,その中のいくつかは現在でも見ることができます。一方陸上生物については,絶滅率は海生生物ほど高くはなかったらしいということがわかっています。しかし正確にどのくらい絶滅したのか,そして絶滅後どのように回復したのかについてはよくわかっていませんでした。
(10/25 Brown University,Delayed recovery of non-marine tetrapods after the end-Permian mass extinction tracks global carbon cycle. Proceedings of the Royal Society B, FirstCite)
ペルム紀末から中生代三畳紀中期まで(約2億6000万年前〜約2億4200万年前)の化石約86000点が調べられました。この化石はロシアのウラル山脈南部と南アフリカのカルー堆積盆から採集されました。この結果,ペルム紀末,陸上生物の約78%が絶滅したらしいということが分かったそうです。またペルム紀末の絶滅を逃れて繁栄した種はほんの数種だったらしいということも分かったそうです。
大量絶滅がおこった直後の生態系では動物の多様性は低く,環境やほかの変化によって簡単にダメージを受けたらしいと研究者は考えています。陸上の生態系が完全に回復するのに約800万年かかったと研究者は考えています。
2011/10/31
ペルム紀末の大量絶滅からの回復は従来考えられていたよりも早かったらしいということがわかりました。
約2億5200万年前の古生代ペルム紀末,海洋生物種の90%以上が絶滅した大量絶滅がおこりました。
(9/30 UZH Mediadesk,Transient metazoan reefs in the aftermath of the end-Permian mass extinction. Nature Geoscience, 4(10), 693-697)
ペルム紀の間,海綿などの多細胞生物が生息していた海底は微生物にとって代わられ,再び多細胞生物が回復するには500万年かかったとこれまで考えられてきました。しかしアメリカ合衆国西部の中生代三畳紀前期の地層から産出する化石を調べた結果,大量絶滅がおこった150万年後には多様な海綿,カンザシゴカイ,またほかの真核性の底生生物が生息していたらしいということがわかったそうです。微生物が優勢だったのは短い間だけだったろうと研究者は考えています。
2011/10/2
カナダから新種の捕食性の魚が発見されました。
カナダの古生代デボン紀後期(約3億7500万年前)の地層から,新種の魚の化石が発見され,Laccognathus embryiと名付けられました。
(9/12 The Academy of Natural Sciences)
L. embryiはシーラカンスや,陸上四肢動物への進化途中にあったと考えられているティクターリクなどと同じ,肉鰭類です。体長は1.5mから1.8m,幅広の頭部に小さな眼,そして大きく鋭い歯の並んだ強力な顎をもっていたと考えられています。海底に身をひそめて待ち伏せし,獲物を襲って食べる捕食者だったと考えられています。
これまでLaccognathus属の魚は東ヨーロッパからしか発見されていませんでした。L. embryiが発見されたことにより,Laccognathus属が北米にも生息していたことがわかりました。またL. embryiの発見は,デボン紀には北米とヨーロッパがつながっていた証拠でもあると考えられています。
2011/9/14
三畳紀には淡水で幼体期を過ごすサメがいたらしいということがわかりました。
キルギスタンの中生代三畳紀中期(約2億3000万年前)の地層から,サメの卵のうと歯の化石が発見されました。この歯は幼体のものと考えられるため,この地域はサメが幼体期を過ごした場所であると研究者は考えています。この卵のうと歯の化石は,hybodontidとxenacanthidの2種類のサメのものだと考えられています。
(9/8 Discovery News)
hybodontidは三畳紀とジュラ紀に反映したサメで,現生のサメに近縁な種類だと考えられています。見た目も現生のサメに似ていますが,雄の頭部に小さな角がある点が異なります。
xenacanthidは中生代三畳紀後期(約2億1000万年前)に絶滅したグループです。ウナギのように細長い体をしており,頭部からは後ろ方向にトゲが生えていました。
現生のサメでは子育ては行われていないので,雌は卵を沈めたら,近くの湖やほかの川に戻っていったと研究者は考えています。子どもは成長するまで卵がかえった湖ですごし,その後成体と合流すると研究者は考えています。
堆積物から,サメが幼体期を過ごしたこの地域は栄養が豊富な植物や動物であふれていたらしいということがわかっています。現生のサメが幼体期を過ごす場所もこれと似たような環境ですが,淡水に卵のうを沈める種類は現生では知られていないそうです。
2011/9/9
約34億年前の微生物の化石が発見されました。
オーストラリアの先カンブリア時代(約34億年前)の地層から,顕微鏡サイズの小さな化石が発見されました。今回発見された化石はすべて同じような大きさでまさに細胞のような構造をしているそうです。約20億年前の地層から発見されている微生物の化石に似ているそうです。また何個か集まって特定の環境にだけ存在し,砂粒にくっついて発見されるそうです。このような産状は生物活動の証拠と考えられています。またこの化石と一緒に黄鉄鉱の結晶も発見されているそうです。これは硫黄代謝の副産物と考えられています。これらのことから,今回発見された化石が生物の化石であることはほぼ確実と考えられています。
(8/22 University of Oxford,Microfossils of sulphur-metabolizing cells in 3.4-billion-year-old rocks of Western Australia. Nature Geoscience, 2011)
この化石はこれまで最古とされてきた微生物の化石よりも約2億年古いものです。
2011/8/28
顎が進化する前の頭部の構造の変化がわかりました。
顎の出現は脊椎動物の進化において非常に重要な出来事です。しかしその出現途中の化石はまだ発見されていません。
(8/17 Bristol University,Fossil jawless fish from China foreshadows early jawed vertebrate anatomy, Fossil jawless fish from China foreshadows early jawed vertebrate anatomy. Nature, 476(7360), 324?327)
現生の脊椎動物の胚の研究から,顎は背中側にある神経堤細胞が腹側に移動して作られることがわかっています。しかし現生の無顎魚類の口を縁取る上唇と下唇は全く別の細胞から作られます。このため,顎は無顎魚類の上唇と下唇が変化してできたものではないということが示唆されます。
今回,古生代シルル紀〜デボン紀(約4億3500年前〜約3億7000万年前)の無顎魚類ガレアスピス類の頭蓋の構造がX線によって調べられました。この結果,2つの鼻嚢が頭蓋の前外側に位置し,下垂体管は口腔に向かって前方に開いていることがわかったそうです。2つの鼻嚢と下垂体管はそれぞれつながることなく独立に存在し,この構造は顎口類(顎をもつ脊椎動物),特にサメに似ているそうです。無顎魚類のほかのグループである円口類や骨甲類にはこのような構造は見られません。2つの鼻嚢と下垂体管が独立した構造は,現在提唱されている顎口類の胚の発生のモデルで,顎の発生に不可欠とされている構造です。無顎魚類であるガレアスピス類にもこの構造が見られることから,顎の出現に伴って頭部の構造が劇的に変化したわけではなく,頭部の構造は段階的に変化していき,最終的に顎を作れるように進化していったと研究者は考えています。
2011/8/21
石炭紀の昆虫は酸素の毒性から身を守るために巨大化したかもしれないということがわかりました。
古生代石炭紀(約3億5900万年前〜約2億9900万年前),翼開長50cm超のトンボ,体長10cm超のゴキブリなど,巨大な昆虫が数多く生息していました。
(8/8 National Geographic News,Can Oxygen Set Thermal Limits in an Insect and Drive Gigantism? PLos ONE)
石炭紀には,酸素濃度が現在の約1.5倍,約30%あったと考えられています。これまで,石炭紀の昆虫が巨大化したのは,この高い酸素濃度を生存に有利に使えたためと考えられてきました。
しかし今回,高い酸素濃度は生物にとってはむしろ毒で,昆虫はこの毒性の影響を弱めるために巨大化したらしいということがわかりました。酸素は生物の生存に不可欠ですが,量が多くなると毒になります。ヒトでも酸素濃度が高いと細胞に損傷を受け,ものが見えなくなったり呼吸が困難になったりします。トンボと同じように幼虫期を水中ですごすカワゲラの幼虫は成虫よりも酸素濃度の変化の影響を受けやすいということが今回の研究からわかったそうです。成虫は気門の大きさを調節して取り込む酸素の量を調節することができますが,幼虫は体の表面から直接酸素を取り込むため量の調節ができないのではないかと研究者は考えています。
このため酸素濃度が高くなったときには幼虫はより酸素の毒性の影響を受けやすくなると研究者は考えています。この毒性の影響を弱めるために体を巨大化させて酸素を取り込む割合を減少させたのではないかと研究者は考えています。体が大きくなると体積に対する表面積の割合が小さくなり,相対的に吸収する酸素の量が減少します。
2011/8/14
恐竜の卵の中に繭と思われる化石があるのが発見されました。
アルゼンチン,パタゴニア地方の中生代白亜紀後期(約7000万年前)の地層からは,ティタノサウルス類の竜脚類の卵が数多く産出します。近年になって,この卵の中に長さ2〜3cm,幅1cmのソーセージのような形の構造があるのが発見されました。この構造は昆虫の繭の化石に似ているそうです。
(7/15 Wiley-Blackwell,Fossil cocoons associated with a dinosaur egg from Patagonia, Argentina. Palaeontology, 54(4), 815?823)
これまで恐竜の卵は数多く発見されてきており,繭の化石も発見例があります。しかし恐竜の卵の中に繭が作られた化石が発見されたのは初めてだそうです。
恐竜の卵の中で発見された繭と思われる構造は,現生のジガバチの1種が作る繭に,大きさ,形が非常によく似ているそうです。このことから研究者は,ジガバチが割れた卵の中で昆虫を捕食していたと研究者は考えています。
卵が何らかの理由によって割れ,まず最初に卵の中身が昆虫などによって食べられたと研究者は考えています。そしてその昆虫かまたはその昆虫を食べたクモを狙ってジガバチが卵の中に入り込んだ,あるいは中身がなくなり砂で満たれた卵の中にいる昆虫やクモをよりどころとしてジガバチの幼虫が繭を作ったと研究者は考えています。
このことから,恐竜の卵の周囲にジガバチを頂点とした複雑な食物網が形成されていたことが示唆されると研究者は考えています。
2011/7/17
顎がどのように進化してきたかがわかりました。
現生の脊椎動物の99%以上は顎をもっています。しかし古生代シルル紀(約4億4400万年前〜約4億1600万年前)までは顎をもたない無顎魚類がほとんどでした。そしてこのころわずかにいた有顎魚類の中には,現在の脊椎動物とは全く異なる仕組みの顎をもつものが多くいました。
(7/6 Bristol University,Initial radiation of jaws demonstrated stability despite faunal and environmental change, Nature, 2011)
今回,この有顎魚類が出現し始めたころの,有顎魚類と無顎魚類の多様性の変化が調べられました。これまで無顎魚類は有顎魚類が出現したことにより競争に負け,多様性を減少させたと考えられてきました。しかしこのことを定量的に確かめる研究は行われてきませんでした。
今回の研究の結果,有顎魚類は無顎魚類の多様性の変化にほとんど何の影響も与えず,無顎魚類が著しく減少し始める前の約3000万年間は有顎魚類と無顎魚類が共生していたらしいということが分かったそうです。また無顎魚類が減少し始めたときも,有顎魚類が無顎魚類の生態的地位にとって代わることはなかったそうです。
また有顎魚類の多様性の変化についても新たなことがわかりました。これまでは古生代デボン紀前期(約4億年前)に酸素濃度が急激に増加したときに,有顎魚類が多様化したと考えられてきました,しかし今回の研究により,有顎魚類の多様性はそれ以前に増加していたらしいということがわかったそうです。
現生の魚類の大部分を占める条鰭類と初期の四足動物は顎と食性に関して,ほんの数タイプしかいなかったそうです。これに対し,板皮類や肺魚などの絶滅してしまった魚類は,驚くほど食性が多様だったそうです。現生につながる有顎魚類は,その進化の初期に顎の機能を完成させてしまったと研究者は考えています。
2011/7/8
カンブリア爆発の時代にすでに,非常に発達した複眼が出現していたらしいということがわかりました。
オーストリア南部の古生代カンブリア紀中期(約5億1500万年前)の地層から,複眼の化石が発見されました。この複眼には3000個ものレンズがついていたそうです。また鉱物化した三葉虫の眼とは違って有機物できていたそうです。これほど複雑な有機物でできた眼はこれまでは古生代シルル紀前期(約4億3000万年前)に発見されたものが最古でした。今回発見された複眼はそれより約8500万年古いです。
(Modern optics in exceptionally preserved eyes of Early Cambrian arthropods from Australia, Nature, 474(7353), 531-634)
今回発見された複眼のレンズの配列とサイズから,この眼をもっていた生物は活発的な捕食者だったと考えられています。この複眼は同時代に生きていた三葉虫よりも高精度で,現生生物と同じくらい発達していたそうです。
この時代に起きたカンブリア爆発は全体的な形態だけでなくより細かなレベルで新しい身体的機能を発達させ,さらに視覚の発達がこの大きな進化を引き起こす要因の1つになったと研究者は考えています。
2011/7/3
新潟県から謎の甲殻類の化石が発見されました。
新潟県糸魚川市の古生代石炭紀前期(約3億3000万年前)の地層から2009年に発見された化石が,甲殻類サイクラスの化石であることがわかりました。
(6/2 フォッサマグナミュージアム)
サイクラスは現生の甲殻類の何に近い仲間なのか,またどのような生態をしていたのかがわかっていない謎の多い甲殻類です。
東アジアでサイクラスが発見されたのはこれが初めてだそうです。また今回発見されたサイクラスは世界でも最古級だそうです。
2011/6/12
モロッコのオルドビス紀の地層からアノマロカリス類の化石が発見されました。
アノマロカリス類はカンブリア紀の海で最強の捕食者だったと考えられている節足動物です。頭部にはトゲがついた大きな触手が1対あり,体はいくつもの節に分かれ,それぞれから横に大きなひれが飛び出していました。これまでアノマロカリス類はカンブリア紀に絶滅したと考えられてきましたが,近年ドイツのデボン紀の地層からアノマロカリス類の化石が発見され,カンブリア紀以降もアノマロカリス類が生きていたことがわかってきました。
(5/25 Yale office of public affairs & communications,A giant Ordovician anomalocaridid,Nature, 473(7348), 510?513)
今回,モロッコのオルドビス紀前期の地層から新種のアノマロカリス類の化石が発見されました。体長約1m,背中側にえらと思われる薄い膜がありました。
2011/5/29
原始的な脊椎動物がどのように食物を食べていたかがわかりました。
現在,ほぼ全ての脊椎動物は顎をもっています。しかし顎がどのように進化したかはよくわかっていません。
(5/19 UZH Mediadesk,Synchrotron-aided reconstruction of the conodont feeding apparatus and implications for the mouth of the first vertebrates, Proceedings of the National Academy of Sciences, Early Edition)
中国の中生代三畳紀前期(約5億1000万年前)の地層から,3次元的に保存されたコノドント動物の中咽頭の化石が発見されました。コノドントは無顎類の歯の化石であると考えられています。今回発見された化石が放射光を用いたX線マイクロトモグラフィー(CT)で調べられました。この結果,上唇が2つあり,1つには長い牙のような構造があることがわかったそうです。また「舌」には何本もの歯が櫛状に並んでいることがわかったそうです。この「舌」は滑車のような軟骨に支えられ,前後方向に動かせたらしいということがわかったそうです。この「舌」と2つの上唇を使って食物をつかみ,その後,喉にある臼歯のような形をした歯で食物を切っていたと研究者は考えています。
この食べ方は現生のヤツメウナギの食べ方と似ているそうです。ヤツメウナギはコノドント動物に最も近いと考えられている現生の無顎類です。今回の研究により,コノドント動物が原始的な脊椎動物(無顎類)であるということが裏付けられたと研究者は考えています。
2011/5/22
オルステン動物群の保存のメカニズムがわかりました。
スウェーデンの古生代カンブリア紀末期(約4億9500万年前)の地層からは,軟体部が残ったまま立体的に保存された非常に保存状態の良い微化石(体長〜数mm)が産出します。これらの化石はオルステン動物群と呼ばれています。これまで,どうしてこのような保存状態の良い化石が産出するのかはわかっていませんでした。
(4/12 京都大学)
今回,この化石が産出する地層が数cmの精度で調べられ,他の生物の排泄物が濃集した厚さ約3cmの層からのみ,オルステン動物群の化石が産出することがわかったそうです。
周囲に堆積した糞から,化石の保存で重要な役割を果たすリンが供給され,軟体部まで残った非常に保存状態の良い化石ができたのだと,研究者は考えています。
2011/5/1
最古のジョロウグモの化石が発見されました。
中国内モンゴル自治区のの中生代ジュラ紀中期(約1億6500万年前)の地層から,ジョロウグモの化石が発見されました。ジョロウグモの仲間の化石の発見例は少なく,新生代の地層からジョロウグモと同じNephila属が5種,そしてスペインの白亜紀の地層から別属のCretaraneus vilaltaeが見つかっているのみです。これまではC. vilaltaeがジョロウグモの仲間で最古の化石でした。
(4/20 BI News,A golden orb-weaver spider (Araneae: Nephilidae: Nephila) from the Middle Jurassic of China. Biology Letters, FirstCite)
今回発見されたクモはジョロウグモと同じNephila属の新種と考えられています。Nephila jurassicaと名づけられました。今回の発見によりNephila属がこれまで考えられていたよりも1億3000万年早く出現したことがわかりました。現在知られている限り,クモの属の中で最も長く存在していることになります。
2011/4/24
陸上で堆積した地層から,10億年前の真核細胞の化石が発見されました。
スコットランド北西部の約10億年前(先カンブリア時代原生代)の地層から,真核細胞の化石が発見されました。これらの化石には多細胞生物の一部と見られる構造や複雑な壁をもったシスト,対称性をもたない生物組織,葉状体などが含まれていたそうです。中には直径1mmに達する大きさのものもあったそうです。この化石が発見された地層は湖の底で堆積したものです。これらの化石は緑色藻類や陸上植物の一部であろうと研究者は考えています。今回の発見は,地上で驚くほど早く複雑な真核生物が出現したことを示す証拠であると考えられています。
(4/12 The university of Sheffield,Earth's earliest non-marine eukaryotes. Nature, 473(7348), 505?509)
2011/4/17
石炭紀の地層から,翅のある昆虫の全身がわかる化石が発見されました。
アメリカ合衆国マサチューセッツ州の古生代石炭紀後期(約3億年前)の地層から,泥の上に翅のある昆虫の体の跡(生痕化石)が残っているのが発見されました。
(4/6 National Geographic News,Late Carboniferous paleoichnology reveals the oldest full-body impression of a flying insect. Proceedings of the National Academy of Sciences, 108(16), 6515-6519)
これはカゲロウの祖先によって付けられたものだと考えられています。
石炭紀の地層からはこれまで翅だけが残っている化石は発見されていましたが,翅のある昆虫の完全な体化石は発見されてきませんでした。虫の形が完全にわかる状態の化石としては,今回の化石が最古のものになります。
2011/4/10
軟体部が細部まできれいに保存された半索動物の化石が発見されました。
中国雲南省の古生代カンブリア紀前期(約5億2500万年前)の地層から,これまでは発見されていなかった軟体部まで非常にきれいに残った生物の化石が発見されました。
(3/24 University of Leicester,An Early Cambrian Hemichordate Zooid. Current Biology, 21(7), 612-616)
発見されたのは半索動物のフサカツギ綱に属する生物です。分泌物で作った硬い管の中に触手をもつ軟体部が入っています。管の先端から触手が伸びてプランクトンを捕まえます。これまでは管がきれいに残ったものしか発見されていませんでしたが,今回発見された化石には1本の腕に36本の触手がついていることまではっきりわかるほど軟体部が細部まできれいに残っていたそうです。
今回発見された種はGaleaplumosus abilusと名づけられました。
2011/3/25
三葉虫の集合化石は群れの行動を保存したものであるらしいということがわかりました。
数十個体の三葉虫が1箇所に集まった状態で化石化したものが発見されることがあります。
(3/17 UC News)
アメリカ合衆国オクラホマ州,モロッコ,ポーランドから採集された,多くの三葉虫が集まった状態の化石が調べられました。死後水流などによって遺骸が1箇所に集められることでも,多くの個体が集まった状態の化石ができます。ですが今回調べられたのは生きているときに多くの三葉虫が集まってその状態のまま死んで化石になったと考えられているものです。巨大な台風のような嵐によって大量の堆積物が急速に降り積もって窒息死したのだろうと研究者は考えています。
脱皮した後の抜け殻がすぐ近くに集まった状態で発見されていることから,調べられた化石が含まれていた地層は堆積したときの状態をそのまま保存していると研究者は考えています。
このような多くの個体が集まった化石では,同じ種の同じくらいのサイズ(すなわち同じくらいの成長段階)の三葉虫が集まっています。
現生のカニやロブスターのように,三葉虫は脱皮するときその壊れやすい殻を守るために集まったのだろうと研究者は考えています。またこうして集まることにより生殖も行えただろうと研究者は考えています。
また三葉虫が前後方向に並んだ化石が発見されることがあります。これは現生の甲殻類で見られる移動の途中の列に似ているため,この化石は移動の途中で化石化したものだろうと研究者は考えています。
これらのことから,多くの個体が集まった三葉虫の化石は,三葉虫の群れでの行動を保存したものであると研究者は考えています。
2011/3/19
約6億年前にはすでに,複雑な構造をもつ真核生物が多様化していたらしいということがわかりました。
これまで発見されている中で最古の,数cmサイズで複雑な体の構造をもった生物の化石群集は,カナダのニューファンドランドで発見されたアヴァロン生物相だと考えられてきました。しかし今回,中国の安徽省から,アヴァロン生物相よりも古い約6億年前の化石群集が発見されました。この化石群集はそれが発見された藍田累層の名前をとって藍田生物相と名づけられました。
(2/17 Virginia Tech News,An early Ediacaran assemblage of macroscopic and morphologically differentiated eukaryotes. Nature, 470(7334), 390?393)
藍田累層からは,藻類と蠕虫のような生物がかたまって発見されたそうです。これらの生物は複雑で奇妙な体の構造をもっており,約15の種が含まれているそうです。
エディアカラ紀が始まる直前,地球が完全に凍りつく全球凍結があったと考えられています。今回の発見から,数cmサイズの真核生物は全球凍結が終わった数千万年後には多様化していたことが示唆されます。
また藍田累層は無酸素の環境下で堆積する黒色頁岩層です。水の流れのない深海で堆積したと考えられています。藻類や蠕虫は死後流されてきたのではなく生きていたその場所で化石化していることから,無酸素の深海で酸素の濃度があがった時期が短期間あったと研究者は考えています。そしてまた酸素がなくなったときに生物は死に,保存状態の良い化石になったと研究者は考えています。
これを証明するためには,藍田累層を構成する細かい層を調べ,化石が産出する層としない層との間で酸素濃度に違いがあるかどうか調べる必要があると研究者は述べています。
2011/2/18
スーム頁岩で非常に保存状態の良い化石ができる仕組みがわかりました。
南アフリカ共和国に分布する古生代オルドビス紀後期(約4億6100万年前〜約4億4400万年前)の地層スーム頁岩からは,非常に保存状態のよい化石が産出します。ここから産出する化石は粘土鉱物によって置換され,中には眼,消化管,筋肉まで残っているものもあります。
(1/21 ScienceDaily,Eolian input into the Late Ordovician postglacial Soom Shale, South Africa. Geology, 38(12), 1103-1106)
スーム頁岩では,プランクトンによって作られた有機物由来の堆積物の中に,それよりも粗い粗粒シルトから細粒砂(粒径0.032mm〜0.25mm)が多く含まれていたそうです。この粗粒シルトから細粒砂は陸上から強い風によって海まで運ばれてきたものだと研究者は考えています。この粒子は植物プランクトンの養分となって海表面における生産性を上げたと研究者は考えています。しかしこれによって大量に増えた植物プランクトンが死んで海底に沈んでいくと,その腐敗で酸素が消費され,海底から酸素が取り除かれることになります。このような環境では生物の遺骸を腐敗させる生物も棲息できないため,非常に保存状態のよい化石が残る原因になったと研究者は考えています。
2011/1/23
三畳紀のアンモナイト類の多様性の変化が調べられました。
約2億5100万年前の古生代ペルム紀末と,約2億年前の中生代三畳紀末,それぞれ海生生物種の約90%と約72%が絶滅する大量絶滅が起こったと考えられています。
(1/12 ScienceDaily,Ammonoid diversity and disparity track episodes of chaotic carbon cycling during the early Mesozoic. Geology, 39(2), 99-102)
ペルム紀末から三畳紀末までの約5000万年間のカナダ西部におけるアンモナイト類の多様性やその変化が調べられ,炭素同位体比の変化と対比されました。
この結果,アンモナイト類のほぼ全ての種類が絶滅したとき,炭素同位体比にも大きな変動があったことがわかたそうです。逆に,アンモナイト類の多様性が最も高い時期には炭素同位体比も安定していたことがわかったそうです。
アンモナイト類は,自由に泳ぎまわれるものと,自分で泳ぐ能力の無いものの2種類に大きく分けられます。ペルム紀末と三畳紀末の大量絶滅後,遊泳性のアンモナイト類の多様性が著しく低くなっていたそうです。これは,遊泳性のアンモナイト類は魚などの活発な捕食者との競争に勝てなかったためであると研究者は考えています。通常は特定のニッチ(生態的地位)に複数の生物が重複して存在しているものですが,大量絶滅後の生物の多様性が少ない時期にはそれができなかったと研究者は考えています。
炭素同位体比の変動は生態系における重複がなくなったことを反映しており,この重複が回復するまで炭素同位体比も安定しなかったと研究者は考えています。この回復には1000万年かかったと研究者は考えています。
2011/1/16
アンモナイトが何を食べていたかがわかりました。
アンモナイトは地層中から大量に産出し,短い期間で進化,絶滅を繰り返したため,地層の年代を決めるのに重要な役割を担っています。しかし軟体部が保存されることがほとんど無いため,その生態や食物網での位置などについてはよくわかっていませんでした。
(1/6 ScienceDaily,The Role of Ammonites in the Mesozoic Marine Food Web Revealed by Jaw Preservation. Science, 331(6013), 70-72)
今回,放射光X線マイクロトモグラフィを用いて,アンモナイトの顎器が調べられました。顎器とはアンモナイトの口にある器官です。上下2枚からなっており,この2枚の間に歯舌があります。今回調べられたのは,異常巻きアンモナイトのバキュリテス3体です。顎器にはいくつかの種類がありますが,バキュリテスの顎器は下顎が上顎よりも大きいアプチクス型になります。
この分析の結果,1体の顎器から微小な浮遊性の甲殻類が発見されたそうです。他の2体からは甲殻類は発見されなかったため,アンモナイトが死後甲殻類に食べられていたのではなく,甲殻類を食べている最中に死んだのだろうだと研究者は考えています。
このことから,アプチクス型の顎器をもつアンモナイトは浮遊性の甲殻類を食べており,ジュラ紀前期の浮遊性甲殻類の放散にあわせて,この種類のアンモナイトも分布域を広げたのだろうと研究者は考えています。また浮遊性甲殻類は白亜紀末に大量に絶滅しており,この食物の絶滅がアンモナイトの絶滅につながったのだろうとも研究者は考えています。
2011/1/9
